大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

名古屋地方裁判所 昭和60年(わ)1129号 判決

国籍

朝鮮(釜山府西大新町二丁目一二五二)

住居

名古屋市天白区植田山一丁目一一〇七番地

パチンコ遊技場経営

今井有福こと金有福

一九三九年一〇月三日生

右の者に対する所得税法違反被告事件について、当裁判所は検察官飯塚和夫出席のうえ審理を遂げ、次のとおり判決する。

主文

被告人を懲役二年及び罰金六〇〇〇万円に処する。

右罰金を完納することができないときは、金二〇万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

この裁判確定の日から四年間右懲役刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、名古屋市天白区植田山一丁目一一〇七番地に居住し、同市北区稚児宮通二丁目四〇番地において、「パチンコ将軍」と称するパチンコ遊技場を経営するなどしているものであるが、自己の所得税を免れようと企て、所得税の確定申告に際しては、所得金額に関する肢支計算をせず適宜の金額を計上する、いわゆるつまみ申告を行う方法により所得の一部を秘匿した上

第一  昭和五六年分の実際の所得金額が八四五三万三九九七円で、これに対する所得税額が四七六一万九二〇〇円であるのに、同五七年三月一二日、名古屋市瑞穂区瑞穂町西藤塚一番四号所在の昭和税務署において、同税務署長に対し、所得金額が一六二〇万円であり、これに対する所得税額が四三六万六〇〇〇円である旨の虚偽過少の所得税確定申告書を提出し、正規の所得税額との差額四三二五万三二〇〇円を免れ

第二  同五七年分の実際の所得金額が三億四九二八万八四三円で、これに対する所得税額が二億四六〇二万二〇〇〇円であるのに、同五八年三月一四日、前記昭和税務署において、同税務署長に対し、所得金額が五九三二万八四五六円であり、これに対する所得税額が二九八〇万一二〇〇円である旨の虚偽過少の所得税確定申告書を提出し、正規の所得税額との差額二億一六二二万八〇〇円を免れ

もって、いずれも不正の行為により所得税を免れたものである。

(証拠の標目)

判示全部の事実につき

一  被告人の検察官(二通)及び大蔵事務官(二二通)に対する各供述調書

一  青山文枝の検察官に対する供述調書

一  呉永重、櫛田光代、栗井文子、青山文枝(四通)、春日喜久子の大蔵事務官に対する各供述調書

一  大蔵事務官平川順一(一七通)、同伊藤斉(五通)作成の各査察官調査書

一  崔光一作成(58・12・15)の総合口座取引元帳等の写し

一  崔光一作成(59・1・13)の通知預金申入書兼印鑑届等写し

一  大蔵事務官服部守作成(59・10・31)の五七年分及び五六年分の所得税の修正申告書の内容についての各証明書

一  大蔵事務官伊藤斉作成(59・12・21)の脱税額計算書説明資料

判示第一の事実につき

一  大蔵事務官伊藤斉作成(59・12・21)の自昭和五六年一月一日至昭和五六年一二月三一日の脱税額計算書

一  大蔵事務官服部守作成(59・10・31)の五六年分の所得税の確定申告内容についての証明書

判示第二の事実につき

一  大蔵事務官伊藤斉作成(59・12・21)の自昭和五七年一月一日至昭和五七年一二月三一日の脱税額計算書

一  大蔵事務官服部守作成(59・10・31)の五七年分の所得税の確定申告内容についての証明書

(法令の適用)

被告人の判示第一及び第二の各所為は、それぞれ所得税法二三八条に該当するところ、右各罪については懲役刑と罰金刑を併科することとし、以上は刑法四五条前段の併合罪なので、懲役刑につき同法四七条本文、一〇条により犯情の最も重い判示第二の罪の刑に法定の加重をし、罰金刑については同法四八条二項により各罪所定の罰金額を合算し、その刑期及び金額の範囲内で被告人を懲役二年及び罰金六〇〇〇万円に処し、右罰金を完納することができないときは、同法一八条により金二〇万円を一日に換算した期間、被告人を労役場に留置することとし、情状により同法二五条一項を適用して、この裁判確定の日から四年間右懲役刑の執行を猶予することとする。

よって主文のとおり判決する。

(裁判官 宮平隆介)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例